映像・動画撮影する上で最低限知っておきたい3つの撮影手法を紹介
映像制作をするならクオリティの高い作品をつくりたいと思うでしょう。
映像作品におけるクオリティとは「人の目を惹く美しさ」のことです。それは映像の基本を押さえておけば簡単に叶えることができます。
良い映像作品をつくるためには、良い編集をしなければなりません。そして良い編集をするためには、良い撮影素材をたくさん撮り集めることが大事に。
つまり、映像撮影はとても重要な役割を担う作業なのです。
この記事では、映像・動画撮影する上で最低限知っておきたい「カメラワーク」「レンズワーク」「フレーミング(構図)」の3つの撮影手法をご紹介します。
これらは映像表現の演出に欠かせない撮影の基礎知識です。それぞれの特性や効果をしっかり理解し、作品作りに活かしましょう。
映像撮影における4つのカメラワーク
カメラワークとは「どのようにカメラを動かすか」という撮影テクニックのこと。でも、ただ動かせばいいというわけではありません。
人に伝わる映像にするためには「なぜ、そのように動かすか」という、何らかの意図をもって撮影することがなにより大事なポイントです。
あなたの表現したいテーマに沿った映像を撮影するために、カメラワークの特性やその効果を理解しましょう。
- フィックス(固定撮影)
- パンニング(横・水平方向の動き)
- ティルティング(縦・垂直方向の動き)
- トラッキング(移動撮影)
フィックス(固定撮影)
フィックスとは、三脚などにカメラを固定して撮影する方法です。これはどんな映像撮影であっても基本となるカメラワークになります。
フィックスの画は全体の変化は少ないですが、その分、動いている被写体に注目させる効果があります。変化が少ない画であるため、落ち着きを表現したり、安定感のある映像に。
たとえば、顔のアップショットでは目や口などの動きに注視させ、細かな表情の変化を伝えることができます。ほかにも、インタビュー撮影では話す人に注目してもらうためにフィックスで撮影されることが多いです。
フィックスは固定された画なので、光の変化や被写体の大きな移動はあまりません。そのため、撮影中に絞りやホワイト・バランスを調整することも少なく、ほかの撮影方法よりも撮影自体は簡単です。
しかしフィックスは固定された画なので、写真の静止画と同じように、構図やアングルなどが重要な要素になります。そういう意味では難しい撮影方法とも言えるかもしれません。
パンニング(横・水平方向の動き)
パンニングとは、カメラを左右に振るカメラワークのことです。「パン」と略して言うこともあります。
ちなみに、右へ振ることを「右パン」と言い、左に振ることを「左パン」と言います。
パンは横長の撮影エリアをワンショットで見せることができるので、広大な風景や状況説明の映像を撮影するのに最適な撮影方法です。
たとえば、周囲の状況を見せて人物の位置関係を説明したいときや、人間の視点(目線)をイメージした動きを表現したいときなどにパンニングで撮影することが多いです。
また、素早いパンを利用することで場面転換という表現にも使われます。
パンニングは基本的に左から右に振る
不自然な映像の流れにならないように、パンニングは基本的に左から右に振ることが多いです。
なぜ左から右にパンするかというと、物の読み書きが左から右だからです。人間にとってはそれがごく自然な動きとして捉えているので、左から右にパンニングすることが基本となっています。
反対に右から左へ振るパンの場合は、「このカメラワークには何か意図があるのでは?」と人間は無意識にそこに意図を感じてしまいます。しかし意図がないのであれば、左パンは使わないほうが賢明です。
パンニングの際は基本的に左から右に振るようにしましょう。
ティルティング(縦・垂直方向の動き)
ティルティングとは、上もしくは下に振るカメラワークのこと。「ティルト」と略して呼ぶことも多いです。
カメラを上に振ることを「ティルト・アップ」と言い、
下に振ることを「ティルト・ダウン」と言います。
ティルトを使う場面としては、背の高い建物をティルト・アップで徐々にその全容を明らかにし、その建物の圧倒的な存在感を表現したり、落ち込んで俯く目線をティルト・ダウンを利用して感情移入させるような表現などがあります。
ティルティングは「希望」や「前進」といった人間の心理的な面の表現や場面転換として使われることが多いです。
ティルティングとパンニングの主な用途や注意点
ティルティングとパンニングには共通の用途や注意点があります。
主な用途や注意点などの共通点をご紹介します。
- いま見せている画面外のものを見せたいとき
- 位置関係を説明するとき
- 画面内に入りきらない横に広いものや背の高いものを見せたいとき
- 動いている被写体をフォローするとき(動きに追尾していく)
- 構図を修正したいとき
- それぞれの始まりと終わりは不自然な画にならないように、滑らかなカメラワークを意識する。
- ショットの始まりと終わりには、映像のつながりを良くするため、数秒間のフィックスの画を入れる。
- 適切なバランスにするため、始まりと終わりのフィックスの画は、しっかりとした構図にする。
- 迷いのない撮影をするため、どこまで「ティルトするか、パンするか」を、動かす前にあらかいじめ決めておく。
- カメラの絞りやシャッタースピードなどはマニュアル設定にして、パンニングの途中で明るさが変わらないようにする。
- 基本的に極端なクローズアップで、ティルトやパンをしない。
トラッキング(移動撮影)
トラッキングとは、カメラを手持ちで持ったり可動式の台などに載せて、動く被写体に合わせてカメラが被写体を追って撮影するカメラワークのことです。
トラッキングはカメラ自体を移動させるので、パンニングやティルティングよりも迫力のある画や臨場感を表現できます。
さらに移動スピードを体感でき、被写体の表情やどういう状況なのかを伝える効果もあります。
ドリー
ドリーとはトラッキングの一種で、被写体に対してカメラ自体が近づいたり、遠ざかったりするカメラワークのことです。
カメラが被写体に近づいていく動きを「ドリー・イン」と言い、逆に被写体から離れていく動きを「ドリー・アウト」と言います。
後述する「ズーム」は人間の目にはない表現なので、多用すれば不自然な映像になってしまいますが、ドリーでは実際に視点が前後に動くため、日常でもありえる視界になります。
つまり、ズームで撮影するよりもドリーで被写体に近づいて撮るほうが、より自然な印象を与えながら被写体の雰囲気を表現できるのです。
映像撮影におけるレンズワーク
レンズワークとは、ズームの操作やレンズを交換し、焦点距離を変えて写したい範囲(画角)を選択したりピントの調整することを言います。
ズーム
ズームレンズを使ってレンズの焦点距離を変えていく撮影方法です。要は被写体に寄ったり引いたりする撮影の仕方。
その画のなかの一部に向かって、フレームサイズを縮めていくことを「ズームイン」と言い、反対に一部から全体へと広がっていくことを「ズームアウト」と言います。
先ほど紹介したドリー・インの場合は、被写体のほうに迫っていくような映像になりますが、ズームインの場合は被写体側が迫ってくるような映像表現にあります。
ズームインは主に特定の被写体を強調したいときや視点を誘導したいときなど、さまざまな場面で利用可能です。それから、何かフォーカスする場面や緊張が高まっていくなどを表現する際にも使われます。
たとえば、ものや人のある部分を強調したいときや、見てほしい場所やある一部に視線を誘導させたいときなど注意を向けるのに効果的です。ほかにも、何かが起こりそうな緊張感の高まりをズームインで表現することもあります。
ズームアウトは被写体とその周囲の関係などの状況説明や、正体の開示や開放、弛緩といった感覚・感情などの表現に利用されます。
たとえば、被写体が置かれている情景を説明する際や、のびのびした印象(開放感)を演出したいときなどにズームアウトが使われます。
フォーカス
フォーカスとは、被写体に焦点(ピント)を合わせたり、外したりする撮影テクニックのこと。
ピントを外した状態から徐々にピントを合わせていくことを「フォーカスイン」と言い、気絶した状態から意識を取り戻すときの人間の視界を表現するときなどに使われる撮影手法です。
反対に、ピントが合っている状態から徐々にピントを外していき、ぼかしていくことを「フォーカスアウト」と言い、回想シーンへ移るときや気を失う演出などに使われます。
また、「A」という被写体にピントを合わせておき、途中で違う「被写体B」にピントを合わせることを「プルフォーカス」と言います。ドラマや映画ではよく使われるレンズワークです。
プルフォーカスは注目の順序をコントロールしたり、次にフォーカスを合わせた先に注意を引き付けるときなどに効果的な表現方法です。
フレーミング(構図)
フレーミングとは、いわゆる”構図”のことで、ある物事を全体的にとらえた時の画面の構成のことを指します。画面全体の効果を高める各要素の配置を考えることとも言われています。
「何を中心的に見せたいのか」「何にインパクトを持たせたいのか」は、一つひとつのシーンで変わってきます。したがって、自然と画面の構図もその時々で変わるということです。
フレーミングには三分割を利用したり、左右対称であったりとたくさんの手法が存在します。構図はどれも違った形を持っていますが、どれも基本となっているのはバランスです。
数ある構図の中から、よく使われているフレーミングをご紹介していきます。
- 三分割方
- シンメトリー(左右対称)
- 対角線構図
- 日の丸構図
三分割法
三分割法とは、画の縦と横を三分割に別けて配置する構図です。
右側に被写体を配置する事によって左側にスペースが生まれ、そこに余白をつくることによって、その画に意味を持たせることができます。
たとえば、二人が会話をしている場面をイメージしてみてください。
二人が会話している状況を引いた画から次のカットで左側に被写体を置き、右側にスペースを作ると右側に話している相手がいることを想像させることができます。
シンメトリー構図(左右・上下対称)
シンメトリーというのは左右対称、もしくは上下対称の構図のことです。
シンメトリーの構図を使うことでバランスのとれた美しい画が出来上がります。そのため、風景を撮影する際に使われることが多いです。
左右対称にすることによって、人間の心理的にその画に見入ってしまうという効果が。結果として観る人を引き込む画が完成します。
縦の左右対称以外にも被写体と水面を反射させ、上下対称にして撮られることもあります。
対角線構図
対角線構図とは、画の対角線上に被写体を配置する構図のことです。
この構図は動きや奥行きを伝えるために使われることが多く、配置の仕方や配置する被写体によって、安定感を得られるだけでなく動きのある画を撮ることができます。
そのため、対角線構図は人物や動物を撮影する際に効果的な構図です。
日の丸構図
日の丸構図は、被写体を画面の中心に配置する構図です。
この構図は「やらないほうがいい構図」として紹介されることがあります。理由はありがちな構図であることに加えて、あまりにきっちり収まりすぎていて情報的な要素が強い印象になってしまうからです。
日の丸構図は、単調な印象を与えてしまうのです。
しかし、日の丸構図の良いところは被写体がわかりやすいので、見る人の目線を自然と被写体に向かせることができます。
もちろん、日の丸構図を活かせる場面もあります。それは、被写体の存在感があるとき、もしくは存在感ある被写体をより強調したい場合など。
ほかにも、シンメトリーな被写体や動物のアップなどインパクトのある撮影対象の場合には、日の丸構図が効果を発揮すると言われています。
ただし、映像では日の丸構図が続くと非常に退屈な印象になってしまい、あまり長い時間その映像を使うと観ている人に飽きられてしまう可能性があるので注意しましょう。
使い所が難しい構図ですが、活かし方によって効果的な表現にもなります。
まとめ
今回はカメラワーク、レンズワーク、フレーミング(構図)の効果的な利用方法についてご紹介しました。それぞれの特性やその効果を理解することで、人に伝わるクオリティの高い映像になります。
それぞれの構図の特性やその効果をしっかり理解していないと、構図を見誤ってしまう恐れがあり、観る人に何も伝わらない映像になってしまうので気をつけましょう。
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